安定した毎月配当を受け取れる投資信託『インベスコ世界厳選株式オープン(愛称:世界のベスト)』について解説します。
無配になる時もあれば、異次元の高分配をする『アライアンス・バーンスタイン米国成長株投信』を攻めの高配当とするなら、インベスコ世界厳選株式オープンは守りの高配当です。
ただ守りの高配当と言っても、利回りは15〜20%と安定しています。
一般的な高配当株の基準として、日本株は利回り3〜5%、米国株は6〜8%であることを考えると、守りと言いつつ、一般的な高配当の個別銘柄よりは圧倒的に高い利回りのパフォーマンスを誇ります。
ファンドの仕組みや特徴、リスクを十分に理解した上で、安定した毎月配当のポートフォリオを組もうと考えている方は、ぜひ参考にしてだくさい。
ファンド概要
ファンド名 | インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型) |
---|---|
愛称 | 世界のベスト |
運用会社 | インベスコ・アセットマネジメント |
設定日 | 1999年1月7日 |
対象インデックス | なし(アクティブ) |
投資対象 | 先進国株式 |
信託報酬 | 1.903% |
信託財産留保額 | 0.3% |
為替ヘッジ | なし |
決算日 | 毎月23日(毎月分配) |
NISA(つみたて投資枠) | – |
NISA(成長投資枠) | – |
ファンド情報 | 公式サイト |
ファンドの仕組み
投資家は『インベスコ世界厳選株式オープン』のベビーファンドに投資をします。
ベビーファンドに集まった資金は、マザーファンドである『インベスコ世界先進国株式マザーファンド』に投資され、マザーファンドは日本を含む先進国株式を中心に投資します。
ポートフォリオの運用方針
ファンドの運用ルールを見ていきます。
マザーファンドである「インベスコ 世界先進国株式マザーファンド」は、主として世界各国の新興国を除く先進国の株式に投資します(日本含む)
成長性・配当・割安という投資の王道的な3要素を重視して厳選された株式へ投資します。
銘柄選定・ポートフォリオは下記のフローを沿って構築されます。
アクティブファンドなので、ファンド側が安定的に高配当を維持できるオリジナルのポートフォリオを構築しています。
同一銘柄への投資割合は原則として純資産総額の10%以下としており、一部の銘柄に偏り過ぎないようにすることで、安定的に分配金を出せるようにしている。
MSCI世界株価指数をベンチマーク
インベスコ世界厳選株式オープン(世界のベスト)は、MSCIワールド・インデックスをベンチマーク(基準とする指標)とし、ベンチマークを上回るパフォーマンスを目指すとしています。
為替ヘッジなし
外国株への投資が主なので資産の基準価額は為替の影響を受けます。
・円安 → 基準価額が上がる
・円高 → 基準価額が下がる
為替の影響を抑えたい場合は<為替ヘッジあり>版のファンドを選ぶという選択肢もあります。ただし、為替ヘッジコストがかかるので、<為替ヘッジなし>と比較して分配金が少なくなる場合が多いです。
ちなみに新NISAのルール上、毎月分配型に投資することができないので、非課税で配当を受け取りたい場合は、年1回決算型や奇数月分配型を選ぶ必要があります。それらも為替ヘッジの有無を選ぶことができます。
NISA | |
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<為替ヘッジあり>(毎月決算型) | 対象外 |
<為替ヘッジなし>(毎月決算型) | 対象外 |
<為替ヘッジあり>(年1回決算型) | NISA(成長)対象 |
<為替ヘッジなし>(年1回決算型) | NISA(成長)対象 |
<為替ヘッジあり>(奇数月決算型) | NISA(成長)対象 |
<為替ヘッジなし>(奇数月決算型) | NISA(成長)対象 |
分配金の支払方法
賛否ある純資産からの分配
毎月の分配金は投資信託の純資産から支払われます。
なので分配金が支払われると、分配の金額相当分が基準価額から下がります。
分配金と基準価額の関係
原則、分配金は計算期間中に発生した運用収益から支払われますが、運用収益を超えて支払われる場合もあります。その場合、当期決算日の基準価額が前決算日と比較して下落することになります。
下記がイメージ図となります。
左図の場合だと、前期決算日の基準価額は10,500円。そこから計算期間中に運用益が50円発生したので、今期の基準価額は10,550円です。
100円の分配金を出す場合の内訳は、期間中の運用収益から50円、期間中の運用収益外から50円になります。期間中の運用収益外から50円を出しているので、分配落ち後の基準価額は-50円の10,450円となります。
期間内に毎月の分配金以上の運用益を出せていれば、分配後の余った金額はファンドに残るので、分配後も基準価額が前期決算期より高くなるので基準価額が上昇します。
つまり、決算日までの計算期間中に運用益を分配金以上にどれくらい出せるかがファンドの実力となってきます。分配金以上の運用益を出せないことが続くと基準価額は下降していくことになります。
普通分配金と特別分配金の違い
運用収益から支払われる分配金を「普通分配金」と言います。元本を取り崩して支払う部分を「元本払戻金(特別分配金)」と呼びます。後者は俗に言う「タコ足配当」です。
たとえば、現在の基準価額が10,500円、平均取得単価が9,000円の場合。直近の分配金100円のうち元本払戻金が50円だった場合、分配後の基準価額は10,450円なのでタコ足配当にはなりません。
しかし、平均取得単価が10,500円だった場合、50円分はタコ足配当ということになります。
タコ足配当の可能性を避ける為には、なるべく安い基準価額の時に口数を集める必要があります。
ただし、機会を伺っている間に基準価額が上がっていく可能性もありますし、全額ならともかく分配金の一部が元本払戻だった決算期が何度かあったとしても、運用益による分配金を含めたトータルリターンで見れば、基準価額が下がるのを待つより、分配をもらい続けた方が良い場合もあります。
- 普通分配金
運用益から支払われる分配金(課税対象) - 元本払戻金(特別分配金)
投資元本から取り崩して支払われる分配金(非課税)
当ファンドは2024年6月に日経新聞でも取り上げられています。掲載時の直近の年間配当1800円に対する元本取り崩し率は8.1%なので、比較的優秀なパフォーマンスを収めています。
毎月分配型ファンド、元本取り崩しの分配金が縮小
残高2位「インベスコ 世界厳選株式オープン <為替ヘッジなし> (毎月決算型)<愛称:世界のベスト> 」も年間分配金1800円に対する元本取り崩し比率は8.1%と低い。
引用元:日本経済新聞(2024.6.20)
直近の分配金推移
インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)の直近1年の分配金推移は次のとおり。
決算日 | 分配金 | 決算日基準価額 |
---|---|---|
2024/06/24 | 150円 | 9,987円 |
2024/05/23 | 150円 | 9,926円 |
2024/04/23 | 150円 | 9,357円 |
2024/03/25 | 150円 | 9,574円 |
2024/02/26 | 150円 | 9,499円 |
2024/01/23 | 150円 | 9,146円 |
2023/12/25 | 150円 | 9,051円 |
2023/11/24 | 150円 | 9,047円 |
2023/10/23 | 150円 | 8,483円 |
2023/09/25 | 150円 | 8,859円 |
2023/08/23 | 150円 | 8,954円 |
2023/07/24 | 150円 | 9,196円 |
合計 | 1,800円 (年間分配金) | 9,256円 (平均) |
直近1年間の1万口(基準価額)あたりの年間分配金は1800円。
毎月の決算基準日価額の平均価額9256円にたいして年間1800円なので利回り19.4%になります。
分配金は150円で安定しており、基準価額も下がり続けるような状態ではないので安定感があります。
上記の利回りを基に投資金額ごとの年間分配金を算出すると
約100万円で年間配当19万4000円
約500万円で年間配当97万円
約1000万円で年間配当194万円
1000万円の投資で年間配当194万円はかなり良いですね。
さらに高額な投資が可能であれば
約2000万円で年間配当388万円
約5000万円で年間配当970万円
約1億円で年間配当1940万円
2000万円ぐらいの投資で年間配当388万円なので新卒1年目の年収くらいの配当を得られます。
5000万円なら大台である年収1000万円ならぬ年配当1000万まであと一歩の水準です。1億円なら年間2,000万も射程圏内に入ってきます。
NISA口座では買えないので税金を差し引く必要はありますが、給与所得や事業所得などが少なければ確定申告で総合課税にして税率を下げることも可能です。ただし、総合課税にすると健康保険料の算定対象になるので税金だけでなく総合的に判断する必要があります。
一般的なFIREや配当生活では、利回り4%を目安に語られることが多いことを考えると、利回り19.4%は異次元の利回りです。老後の資産形成や高配当株投資の常識がくつがえりますね。
しかし、高配当投資においては分配金の安定性も重要です。
今後どのような分配金の変動リスクがあるかシミュレーションする為に、過去の分配実績にも目を通しておきましょう。
分配実績と利回り(2023年)
2023年(1月〜12月)の分配実績は1800円(1万口あたり)
毎月の決算日基準価額の平均価額8751円に対する保有口数別の年間分配金と利回りは次のとおり。
投資額 | 資産評価額 | 月割分配金 | 年間分配金 | 利回り |
---|---|---|---|---|
1,000,000口 | 875,100円 | 15,000円 | 180,000円 | 20.5% |
5,000,000口 | 4.375,500円 | 75,000円 | 900,000円 | 20.5% |
10,000,000口 | 8,751,000円 | 150,000円 | 1,800,000円 | 20.5% |
2023年は米国株や日本株を中心に相場の調子が良かった年になります。また日本は円安進行が加速し、外貨資産の円建評価額が高くなる時期でした。
この年の分配金は12回分すべてにおいて1万口あたり150円でした。基準価額は平均8,700円台だったので、年間の分配利回りは20.5%でした。150円の分配を維持して8,700円台だと利回り20%の大台に乗ります。
分配金は150円で安定しているので、基準価額が下がる局面があれば積極的に買い増していくことで、高い利回りを維持できます。
分配実績と利回り(2022年)
2022年(1月〜12月)の分配実績は1800円(1万口あたり)
毎月の決算日基準価額の平均価額8655円に対する保有口数別の年間分配金と利回りは次のとおり。
投資額 | 資産評価額 | 月割分配金 | 年間分配金 | 利回り |
---|---|---|---|---|
1,000,000口 | 865,500円 | 15,000円 | 180,000円 | 20.7% |
5,000,000口 | 4,327,500円 | 75,000円 | 900,000円 | 20.7% |
10,000,000口 | 8,655,000円 | 150,000円 | 1,800,000円 | 20.7% |
2022年は世界的な利上げの影響により株価のパフォーマンスが悪い年でした。それでも平均の基準価額は8655円、利回りは20.7%なので、2023年と大きな差はありません。ファンドの運用力の高さが垣間見れます。
分配実績と利回り(2021年)
2021年(1月〜12月)の分配実績は1800円(1万口あたり)
毎月の決算日基準価額の平均価額9477円に対する保有口数別の年間分配金と利回りは次のとおり。
投資額 | 資産評価額 | 月割分配金 | 年間分配金 | 利回り |
---|---|---|---|---|
1,000,000口 | 947,700円 | 15,000円 | 180,000円 | 18.9% |
5,000,000口 | 4,738,500円 | 75,000円 | 900,000円 | 18.9% |
10,000,000口 | 9,477,000円 | 150,000円 | 1,800,000円 | 18.9% |
2021年は米国株を中心に非常に相場の良い年でした。年間の平均基準価額は9,477円なので割と高い水準です。この年の分配金も12回分すべて150円を維持しています。基準価額が高い代わりに利回りは18.9%という結果に。
配当が150円で安定している場合、やはり8,000円台になる局面の時に口数を集めることが、より良い利回りを維持できると考えられます。
なお、この2021年のドル円の為替相場は105〜115円でこの基準価額だったので、円高になると円安時の基準価額を超えられないと決めつける必要はないかと思います。
過去の無配履歴
高配当を目的に投資している方にとって最も困るのが「無配」になることでしょう。
証券会社のファンドページで過去の分配実績を確認するとわかりますが、2017年以降、150円の分配金を下回ったことがありません。なので無配実績はゼロ(2024年7月時点)ということになります。
ただし、購入者の取得単価によっては分配金に元本払戻金(タコ足)含まれる場合があります。
分配金自体は150円を安定して出しているので、なるべく基準価額が下落した時(理想は8,000円台)は、積極的に口数を増やすことで、分配金に元本払戻金が含まれる確率を減らすことができます。
手数料
信託報酬1.903%
インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月分配型)の信託報酬は1.903%です。
信託報酬の手数料は、保有している純資産総額に対して年率1.903%の割合でかかるので、安いほど投資家側の利益が残りやすい構造になっています。
昨今はインデックス系などを中心に0.1%以下の低コストファンドが当たり前になっているので、その感覚で見ると非常に高いと感じる手数料です。
しかし、大事なのは手数料ではなくパフォーマンスです。
要は手数料以上のリターンがあれば良いわけです。
年率1.903%の手数料を負担しても、運用益で15〜20%を超える分配リターンがあれば十分と言えるでしょう。
ただし、平均取得単価が基準価額を下回る状態が続くと分配金に元本払戻金が含まれる確率が増えるので、目先の分配金利回りだけでなく、運用益による分配金と含み益ベースで見る必要があります。
タイミングを伺ってばかりも良くないですが、基準価額が取得単価より下がった局面では、買い増せる準備があるとより良い運用ができると思います。
信託財産留保額0.3%
このファンドを買う上で留意しておくべきなのが「信託財産留保額」です。
信託財産留保額とは、投資信託を売却する際に必要な手数料のこと。売却時に基準価額の0.3%という形で売却益から差し引かれます。
売却した投資家に代金を支払うには、その分だけファンド内の資産を売却する必要があり、そのために手数料がかかるからです。投資信託を保有し続ける他の投資家への影響を避ける為に、手数料を投資家に負担してもらうという考え方です。
昨今は無料のファンドも多いのでデメリットではありますが、無料で気軽に売却しにくいことで、狼狽売りを抑制する効果があるようにも思えます。
配当目当ての場合、目的は売却益ではなく安定した配当なわけですから、基準価額が下落した時は売り抜けるのではなく買い増しをして、取得単価を下げつつ口数を増やす方が良いのです。
そういう意味では暴落耐性があり、ファンドの基準価額の安定にも寄与するので、安定した配当を受け取り続けたい方にとってはそこまで気にする必要はないと思います。
まとめ
インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)は、毎月安定したインカム収入が欲しい方にとって非常に良い投資信託です。
2017年1月以降、毎月150円以上(1万口あたり)の分配を出し続けるので、無配リスクを極力避けたい方にとっては良いファンドだと思います。
一方、分配金はファンドの純資産から拠出されるので、取得単価が基準価額に近い、または下回っているような状況だと、元本払戻金としてタコ足配当になる期間が発生する可能性も考慮しておく必要がある。
もちろん、そういった状況を避ける為にファンドはアクティブ運用を行って基準価額の向上に務める。このファンドは、MSCIワールド・インデックス(オルカンのようなもの)をベンチマークとして運用しているので、分配を出す分インデックスほどの上昇力はありませんが、将来的に基準価額は今よりも上がっていくことが期待される。
分配金の利回りを高めたり、元本払戻金が含まれる確率を下げたいなら、下落局面では積極的に買い増しをし、取得単価を下げて分配金を受け取り続けるのが良いでしょう。
そのファンドの性質、投資する目的、期待する成果をしっかり理解した上で投資先を決定しましょう。